酒蓋の話。

小学校2年生のころ、日本酒や焼酎の酒瓶の蓋、酒蓋をコマにする遊びが流行った。

 

酒蓋コマはこの年に転校してきたRくんが教えてくれた遊びだった。

 

遊び方は簡単。親指と中指で酒蓋を回して対戦するだけ。

 

始めは親父が飲み終わった酒瓶から取ったもので遊んでいたが、それだけでは数がなかなか増えず、次第にもっと欲しくなり当時学区内にいくつかあった小さな酒屋さんの酒瓶ケースから集めるようになった。酒屋さんは雨水が入るからダメ!という人もいたし、捨てるだけだから持っていっていいよ!といってくれる人もいた。とにかく夢中になって酒屋を巡り酒瓶ケースから酒蓋をとりまくった。珍しい酒蓋やかっこいいデザインの酒蓋を手に入れると羨望の眼差しを受けた。

 

そのうちに酒蓋の裏に画鋲をさして回転数を速くする裏技なども開発されたが、どちらかというとコレクションの楽しさが大きな比重を占めていたと思う。

 

この遊びが全国的なものだったのか、ローカルなものだったのか、はたまた現在の子どもたちもこの遊びをやっているのかは定かではない。

 

が、少なくとも僕が住んでいた学区の子どもたちは酒屋巡りは出来そうもない。何故なら当時あった小さな酒屋さんはもうほとんど無くなってしまったから。いつまであったのか、いつ無くなったのか。酒蓋遊びに飽き、酒屋さんに興味が薄れてからは気にもとめていなかったのでわからない。気付いたらもう殆ど無くなっていた。

 

R君と僕は親友だった。

 

転校生という自分の持っていない要素を持ったR君が、ただそれだけでなんだか羨ましく、魅力的で僕からよく話しかけてすぐに仲良くなった。放課後も毎日のように遊んだ。

 

当時、僕は親友というものに憧れていた。国語の教科書に載っていた「ふたりはともだち」アーノルド・ローベル作 という、かえるくんとがまがえるくんの友情物語がたまらなく好きだったからだ。

 

宿題なんてほとんどまともにやっていなかったと思うが、国語でかえるくんに手紙を書くという宿題があったときは喜んで書いた。かえるくんから返事の手紙がくると大興奮。宿題は終わったのに何度も返事を書いて担任の先生はさぞかし迷惑だっただろう。

 

親友に憧れていた僕はRくんに確認したこともあった。

 

「おれたち、親友だよね?」と。

 

はじめて付き合いはじめたカップルのようで、今考えるととても気持ちが悪い。

 

2年生が終わる少し前に、僕とRくんは喧嘩をした。最早、何で喧嘩をしたかなど微塵も覚えていないがそれ以降全く口を利かなくなった。

 

3年生に上がるときにクラス替えがあり、ますます距離は遠くなった。結局6年生まで再びクラスが同じになることはなく中学もばらばらになって今に至る。

 

 

しかし小学2年生だったあの1年間。どう考えても確実に僕とR君は親友だった。誰が見ても仲良しな二人だった。初めての親友だった。

 

 

今宵、親父ではなく自分で空けた酒瓶の酒蓋を眺めながら想う。

 

 

Rくんは元気だろうか。


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